広げようレパートリー 雨の慕情
このコラムはエンタメ士がいざ選曲する際になかなかレパートリーが出てこないあなたのために、様々なジャンルの比較的歌いやすい楽曲を紹介するコーナーです。
「雨の慕情」は、1980年発売の八代亜紀のヒットシングル。
阿久悠作詞の楽曲である。
阿久悠は、世間一般の常識を少し外した感覚の歌詞やエキセントリックな内容の楽曲を提供することで他の作詞家と差別化を図るタイプの作詞家であった。
「雨の慕情」も、雨が一般的に避けられるもの、気持ちの落ち込みを誘うものであるところ、逆に雨雨降れ降れもっと降れと恋哀歌の中で雨に対してポジティブなフレーズを繰り返し用いている。
(雨雨降れ降れもっと降れ、私のいい人連れてこい。)
この曲の肝心な部分はわずかこれだけである。
この歌詞に浜圭介が作曲を行い、八代亜紀が雨声のようにしっとりと歌い、大ヒット曲となった。
ただ、阿久悠は、この雨の慕情の歌詞は、北原白秋の童謡「あめふり」にヒントを得たのではないかと思える。
しかし、着想の元が何であれ、ポップス作詞家の代名詞とも言える存在でありながら、分かりやすく情景描写が鮮明な、演歌らしい演歌を提供できてしまえるあたりが、天才のなせる業である。
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